生成AIやBIツール、業務自動化ツールの活用が進む中で、企業のデータ活用は大きく変わり始めています。
「AIに聞けば分析できる」
「BIツールを入れればレポートは自動化できる」
「これからはExcelではなく、もっと高度なツールが必要になる」
そう考える企業も少なくありません。
しかし実際の現場では、今も多くの業務がExcelを起点に動いています。
売上管理、顧客リスト、在庫管理、勤怠集計、案件進捗、月次レポート、広告実績、請求データ。部署や業種を問わず、Excelは日々の業務に深く入り込んでいます。
AIやBIツールが進化している今だからこそ、改めて求められているのが、Excelを使って現場データを整え、活用できる状態にする人材です。
本記事では、「AIがあるのに、なぜExcel人材が必要なのか?」という疑問に対して、企業のデータ活用の現場視点から解説します。
執筆:檜田詩菜(ひわだしいな)/マーケティング部
BtoB領域を中心に、SEO記事・ホワイトペーパー・メールマーケティングなどのコンテンツ企画制作に従事。見込み顧客との接点づくりからナーチャリング設計まで、コンテンツを軸としたマーケ支援を行っている。
AIやBIツールが広がっている一方で、Excelは今も多くの企業で使われています。
その理由は、Excelが単なる表計算ソフトではなく、現場の業務に最も近いデータ管理ツールとして使われているからです。
たとえば、次のような業務では今もExcelが活用されています。
Excelは、現場担当者が自分たちで入力・修正・集計しやすいという特徴があります。
専門的なシステム知識がなくても使え、業務変更にも柔軟に対応できるため、現場に定着しやすいツールです。
もちろん、すべての業務をExcelで管理し続けることが最適とは限りません。
しかし、AIやBIツールを導入する前段階では、Excel上にあるデータをどう整理し、どう活用につなげるかが重要になります。
AIやBIツールは、データを分析したり、可視化したり、業務判断を支援したりするうえで非常に有効です。
しかしどれほど便利なツールを導入しても、
元になるデータが整っていなければ期待した成果にはつながりません。
たとえば、次のような状態のデータはありませんか。
このような状態のままAIやBIツールにデータを渡しても、正しい分析や判断につながりにくくなります。
AIは、与えられたデータをもとに処理や分析を行います。
BIツールも、元データの設計や項目の整合性が整っていなければ、見やすいダッシュボードを作っても運用が止まってしまうことがあります。
Microsoftは2025年のWork Trend Indexで、AI活用が組織の戦略や業務運営を見直す重要なテーマになっていることを示しています。AI活用が進むほど、企業にはツールの導入だけでなく、業務やデータの整備も求められるようになっています。
これまでExcel人材というと、次のようなイメージを持たれることが多かったかもしれません。
もちろん、こうしたスキルも今なお重要です。
しかし、AI時代に求められるExcel人材の役割は、それだけではありません。
これからのExcel人材に求められるのは、現場に散らばるデータを整理し、業務や分析に使える形へ整える力です。
具体的には、次のような役割が求められます。
つまり、Excel人材は単なる「入力・集計担当」ではなく、
現場データを使える状態にする橋渡し役になっているのです。
「AIがあるなら、Excelはいらなくなるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし実際には、ExcelそのものもAI時代に合わせて進化しています。
さらに、Pythonを活用した高度な分析によって、予測分析やリスク分析などもExcel上で実行できるようになっています。
これは、ExcelがAI時代に不要になるというより、むしろAIや高度な分析を現場に近づける入口になっていると捉えることができます。
ただし、AI機能が便利になっても、すべてを自動で解決してくれるわけではありません。
つまり、AIが進化するほど、現場側には次のような力が求められます。
この土台を支えるのが、Excelを起点にデータを扱える人材です。
では、なぜいま改めて企業はExcel人材を求めているのでしょうか。
理由は大きく5つあります。
多くの企業では、日々の業務データがExcelで管理されています。
基幹システムやSaaSを導入していても、現場での確認用や加工用としてExcelに出力し、そこから集計・報告を行っているケースは少なくありません。
そのため、データ活用を進めるには、まずExcel上にあるデータを把握し、整理する必要があります。
AIやBIツールを導入したものの、元データの整理で止まってしまうケースがあります。
たとえば、ダッシュボードを作る以前に、次のような課題が発生します。
こうした作業は、地味に見えますが、データ活用の土台です。
Excel業務は便利な一方で、属人化しやすいという課題もあります。
「この集計はあの人しかできない」
「マクロの中身がわからない」
「前任者が作ったファイルをそのまま使っている」
「毎月のレポート作成手順がマニュアル化されていない」
このような状態では、担当者が異動・退職したときに業務が止まってしまう可能性があります。Excel人材は、単に作業を代行するだけでなく、属人化した業務を整理し、誰でも運用しやすい形に整えることができます。
たとえば、
といった改善が可能です。
BIツールを導入すれば、データを見やすく可視化できます。
しかし、BIツールに取り込む元データが整っていなければ、ダッシュボードはうまく機能しません。
たとえば、売上データをBIツールで可視化する場合でも、事前に次のような整理が必要です。
この工程でExcelが使われることは非常に多くあります。
Excel人材がいれば、BIツール導入前のデータ準備や、導入後のデータ更新・確認作業を支えることができます。
AIやBIツールを導入する際、よくある課題が「現場で使われない」というものです。
見た目のよいダッシュボードを作っても、現場の判断に必要な数字が入っていなければ使われません。
高度な分析をしても、現場の業務フローに合っていなければ定着しません。
データ活用を進めるには、ツールの知識だけでなく、現場業務への理解が欠かせません。
Excel人材は、日々の業務に近い場所でデータを扱っているため、次のような視点を持ちやすい人材です。
このような現場視点があるからこそ、Excel人材はAIやBI活用の「橋渡し役」として求められています。
Excel人材は、特定の部署だけでなく、さまざまな部門で活躍できます。
| 部門・領域 | Excel人材が担える業務 |
|---|---|
| 営業部門 | 売上集計、案件管理、予実管理、営業レポート作成 |
| 管理部門 | 勤怠・経費・請求データの整理、定型レポート作成 |
| マーケティング部門 | リード管理、資料ダウンロード数集計、広告実績レポート整理 |
| 経営企画部門 | 月次データ集計、KPI管理、経営会議用資料の作成 |
| 人事部門 | 採用進捗管理、研修受講状況の集計、人員データ管理 |
| 店舗・拠点管理 | 売上・在庫・シフト・実績データの集計 |
| DX推進部門 | Excel業務の棚卸し、BI連携前のデータ整備、業務改善支援 |
このように、Excel人材は「Excel作業をする人」ではなく、各部門のデータ活用を支える人材として活躍できます。
AI時代に求められるExcel人材には、従来のExcel操作スキルに加えて、Excel内のAI機能を活用しながら、データを整え、出力結果を確認し、業務に落とし込む力が求められます。
ExcelにもCopilotなどのAI機能が搭載され、自然言語でデータの傾向を確認したり、数式作成を支援したり、表の整形や分析のヒントを得たりできるようになっています。つまり、これからのExcel人材は「すべてを手作業でこなす人」ではなく、AIを使いながら、より早く・正確にデータ活用を進める人材へと役割が変わっていきます。
ただし、AI機能があるからといって、Excelスキルが不要になるわけではありません。
AIが提案した数式や分析結果が正しいかを判断するには、Excelの基本構造やデータの見方を理解している必要があります。
Excel内のAI機能を活用するには、元データが整っていることが前提になります。
たとえば、次のような状態では、AIも正しくデータを読み取りにくくなります。
ExcelのAI機能を活用すると、自然言語で次のような依頼ができるようになります。
MicrosoftのCopilotプロンプト集でも、Excelでデータのクリーンアップ、傾向分析、インサイト抽出に使えるプロンプト例が紹介されています。
ただし、AIにうまく指示を出すには、業務目的に合わせて問いを立てる力が必要です。
AIは便利ですが、常に正しい答えを出すとは限りません。
AIが作成した数式が業務ルールに合っていないこともあります。
AIが示した傾向が、元データの欠損や入力ミスに影響されていることもあります。
AIが作ったグラフが、判断に必要な切り口とずれていることもあります。
だからこそ、Excel人材には、AIの出力結果をそのまま使うのではなく、正しいかどうかを確認する力が必要です。
具体的には、
といったスキルです。
ExcelにAI機能が入っても、データクレンジングの重要性は変わりません。
むしろ、AIやBIを活用する前提として、より重要になっています。
たとえば、
といった作業は、AI活用の土台になります。
AI機能が進化しても、Power Queryや関数のスキルは引き続き重要です。
なぜなら、毎月発生する定型作業や、繰り返し行うデータ加工は、AIに毎回依頼するよりも、Power Queryや関数で仕組み化したほうが安定するケースがあるからです。
たとえば、
などは、Power Queryや関数を活用することで再現性のある運用にできます。
Excelで整えたデータは、そのままBIツールに連携されることもあります。そのため、これからのExcel人材には、Excel内で完結する表ではなく、BIやAIでも扱いやすいデータ構造を意識する力が求められます。
たとえば、
といった考え方です。
AI時代に特に重要になるのが、業務理解です。
AIに質問するにも、BIで可視化するにも、そもそも「何を見たいのか」「何を判断したいのか」が整理されていなければ、意味のあるアウトプットにはなりません。
Excel人材には、現場担当者と会話しながら、次のようなことを整理する力が求められます。
Excel人材を確保する方法には、大きく分けて「社内で育成する方法」と「外部人材を活用する方法」があります。
社内人材を育成するメリットは、業務理解が深いことです。自社の業務フローや社内ルールを理解しているため、現場に合った改善を進めやすいという利点があります。
一方で、育成には時間がかかります。既存業務と兼務しながらExcelやデータ活用スキルを身につける場合、改善に十分な時間を割けないこともあります。
外部人材を活用するメリットは、必要なタイミングでデータ整備やExcel業務を進めやすいことです。
たとえば、
といった場合、外部人材の活用が有効です。
AIやBIツールは、企業のデータ活用を大きく前進させる可能性があります。
しかし、ツールを導入しただけで、すぐに成果が出るわけではありません。
成果につなげるには、次のような体制が必要です。
このような土台があってはじめて、AIやBIツールは本来の力を発揮します。
コクーの「データ女子」では、Excelを使ったデータ整理・集計業務から、BIツールを活用した可視化、ダッシュボード運用まで、現場に寄り添ったデータ活用支援を行っています。
たとえば、次のようなお悩みに対応可能です。
データ女子は、単にツールを導入するだけではなく、現場業務を理解しながら、データを使える状態に整えることを大切にしています。
Excel、CSV、スプレッドシートなど、現場にある身近なデータから整理を始め、必要に応じてBIツールでの可視化や運用支援まで伴走します。
AI時代にExcel人材が求められるのは、Excelが古いツールだからではありません。
むしろ、企業の現場には今もExcelを起点としたデータが多く存在しており、そのデータを整理し、AIやBIで活用できる状態にする人材が必要とされています。
これからのExcel人材は、単なる作業者ではありません。
このような役割を担う存在です。
AIやBIツールを本当に活かすためには、まず現場のデータを整えることが欠かせません。
「AIがあるのにExcel?」ではなく、AIを活かすためにこそ、Excel人材が必要なのです。